気鋭の映画監督・山中瑶子「多様な人が監督をできたらいいですよね」
デビュー作がいきなり海外で高い評価を受け、気鋭の映画監督として注目を集める山中瑶子さん。王道ではない多様な生き方を肯定し、国境や世代を飛び越えた活躍を続ける彼女の考える、“ボーダレス”とは。
対外的な自分と本心の矛盾を描きたかった。
惰性で仕事をこなし、将来の夢もない。恋愛はするけれど、真剣に相手に向き合うわけでもない。漂うように日々をやりすごす21歳のカナ。山中瑶子監督は、映画『ナミビアの砂漠』で現代の日本を気だるく生きる女性の心のもがきを描いた。
「対外的にはこう振る舞わなきゃいけないとわかっている自分と、抱えている本当の気持ちが違うことは、きっと誰にでもありますよね。
この作品ではその矛盾を扱いたかったんです。いわゆる王道のわかりやすい主人公キャラだけでなく、映画においては世の中には様々な人がいることを可視化することも大事だと思っていて。もし“こんなふうに思ってはいけないんだ”と、自分を縛っている人がいるなら、この作品を観て安心してくれたら嬉しいです」
山中監督は母親が中国出身のミックスルーツ。そしてカナも日中のミックス。その設定は脚本執筆の終盤で足したそう。
「よく耳にする“日本人として”の中に自分が含まれている気がしなくて、日本に根づいている感覚がないまま育ってきたんです。