画家ボナールと妻が過ごした波乱の半生…フランス映画界の名優と名匠が挑んだ破天荒な愛
ただ、僕としては女性の画家を続けて描こうという気持ちはなかったので、正直に言うと連絡をもらったときは、まったく興味がありませんでした。
まるでボナールの絵を見ているかのような気分になった
―では、そこからどのようにして映画化へと進んでいったのですか?
監督とりあえず本を読んでみたところ、ボナールとマルトが長年暮らしていた場所と僕の家は数キロしか離れていないことに気がついたのです。実際に行ってみると、当時はコロナ禍だったこともあり、本当に静かで、目の前に広がっていたのは昔のままの自然の景色。まるでボナールの絵を見ているかのような気分になったのを覚えています。そのときになってようやく「これは何かできるかもしれない」と感じるようになりました。ただ、マルトだけでなく、ボナールと合わせてカップルの話にしたいというのは最初から考えていたことです。
―ヴァンサンさんは、ボナール役のオファーが来たときはどのようなお気持ちでしたか?劇中では絵を描くシーンも多かったですが、もともと得意だったのでしょうか。
ヴァンサンさん実は、僕の母は画家なんですが、僕自身はそんなに絵がうまいほうではないんですよ(笑)。