13作目:ダム問題を抱えながらも、強く美しく生きる里山の人々を記録した映画『ほたるの川のまもりびと』 |GOOD CINEMA PICKS
とりわけ印象に残ったのは、その豊かな暮らしだった。長崎県こうばる地区。夏にはほたるが舞い飛ぶこの里山に生きる人々の日常には「結束」という言葉がよく似合う。結束せざるを得なかったのだ。長崎県がこうばる地区に石木ダムを建設するために現場調査を始めた1962年以来、彼らは長きに渡り抗議活動を続けてきた。『ほたるの川のまもりびと』はそんな住民たちの日常を記録したドキュメンタリー映画である。
作中でみられる、こうばる地区の豊かな自然を知ってもらうために始められた「ほたる祭り」を準備する住民の様子にはうらましさすら覚える。子どもも、お母さんもお父さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも、みんな一緒になって料理を作ったり、川で魚を捕まえたり。
なんとも楽しそうである。不思議なことに、そしてこんなことをいうと不謹慎なのかもしれないが、ダムの反対運動すら楽しそうにみえてしまう。一日もかかさず建設予定地に足を運ぶ住民たちは、バリケードを作るためにゲートの前に一列に並べたアウトドアーチェアに座り、蒸したさつまいもを分け合ったり、スーパーの値引きについて話したりしている。
不条理を知った以上何か伝えなければならない
「不条理を知った以上何か伝えなければならない」。