【シネマモード】『ハウスメイド』イム・サンス監督の“囚われない”映画づくり
監督は彼女に“一級の芸術家”と最高の賛辞を捧げている。
「チョン・ドヨンには苦労をかけたと思います。彼女は、感情型(感情を大事にするタイプ)の女優ですが、私はその反対のところにいる演出家です。私は彼女にできるだけ感情を排除した形の演技を求めました。それは彼女にとって大変な苦痛だったと思います。あるとき、私の元に来て『どうしたらいいのか分からない。私は本当にウニになれているの?」と泣きながら訴えたことがありました。そんな迷いや葛藤も含め、彼女はウニそのものだなと感じていました。
彼女でなければ、ウニは成立しませんでした。彼女はどんなときも素晴らしいです。撮影に臨む時点で、正確に100のものを持ってきます。でも私がそこに対して5つ変なことを言うんです(笑)。そうすると、彼女は駄々をこねたり、正面切って私を非難したりしながらも、撮影に入る時にはその5つを利用して再度プラス10をつくりあげ、110の状態で演じるんです。素晴らしい女優だなと感じました。今回はユン・ヨジョンさんやイ・ジョンジェさんという存在も、相乗効果として働いてくれましたね」。
今回のインタビューでも、オリジナリティ溢れる言葉遣いで心情を披露し、優れた表現者たる風格を感じさせてくれた監督だが、映画的言語センスにも極めて優れていることは、本作を観ただけでもよく分かる。