【シネマモード】傷ついても探求する、女の人生 人生に迷うあなたに贈る『サラの鍵』
ジュリアは、このホロコースト事件を取材するうちに、自分とヴェルディヴに送られたある家族との接点を見つけてしまうのだ。彼女は、フランス人の夫の家族から譲り受けたアパートに、かつてユダヤ人家族が住んでいたことを知る。彼らが検挙されたのと、夫の家族がアパートに引っ越したタイミングがほぼ同じであることも。そこで生まれたひとつの疑念を無視することなど到底できず、真実を追い求め、やがてパンドラの箱を開けてしまうジュリア。彼女の夫が言うように、事実を突き止めたからと言って、事態は誰にとっても良くなるわけではない。過去の暗い秘密を暴くことは、むしろ多くの人を傷つけるだろう。だから、本作に登場する男たちは彼女の行動に疑問を投げかける。なぜそんなことをするんだと、ごく理論的に。
「それはジャーナリストの好奇心か」と夫はジュリアに尋ねるが、そうではないことを女ならばわかるだろう。理性ではなく感情が、真実を求めてしまうということを。家族の持つ秘密をあえてほじくり返した妻を夫は理解できない。後に、ジュリアが接触することになるサラの関係者も、家族の秘密を他人から明かされ「いいかげんにしてくれ。この話は聞きたくない」