『しあわせのパン』原田知世 「自分を見つめなおす、そのためにこの映画に出会った」
と微笑みながら、その素敵な理由を語る。
「私の演じたりえさんは、とても繊細な気持ちを持っている女性。子供から大人へ成長する過程の多感な時期に、いろいろなことを敏感に感じていたんじゃないかなと思うんです。月浦へ行く前は、東京で仕事をしていたけれど、決して器用でもなくて。多分、自分が大事にしているものを何年も使うような人なんでしょうね。だから、あるひとつの出来事で心が折れたのではなく、いろいろなことが重なって、子供の頃から追い求めていたマーニ(絵本に登場する男の子)、私のマーニはどこにもいないんだ…と、孤独を抱えるようになってしまうんです」。
そんな彼女に「月浦で暮らそう」と、すっと手を差し伸べるのが水縞くんだ。彼の愛は無償の愛だと原田さんは言う。
「無償の愛って親子の間ではあっても、夫婦の間ではなかなか難しいものですよね。でも、りえさんにとって水縞くんは運命の人で、水縞くんにとってもりえさんは運命の人。特に水縞くんはりえさんを愛することが、ひとつの使命と言えるほどの深い愛を持っているんです。本当に理想の男性。実際はなかなかいないですけどね(笑)」。さらに、撮影後に監督(三島有紀子)自ら書き下ろした同名小説を映画鑑賞後に読むことで、「そこには、水縞くんがどういう気持ちでりえさんを見つめていたのかが書かれていて、涙が止まらなかった…。