【シネマモード】映画に「騙される」秋 壮大な“だまし絵”『鍵泥棒のメソッド』
桜井の大根演技ぶりを、演技論を極めたコンドウが指摘し、ダメ出しする様子にも笑いが堪えきれません。堺氏にしても、「この大根演技は演技だよね…あれ、それとも地なの?いやいや演技はお上手なはずだしな…」と観る者を煙に巻く始末。「この人たち、どこまで演技?」、「もしかして素なの?」と思うほどに怪演を披露する俳優陣に翻弄されっぱなしでした。
本作では、『アフタースクール』ばりのおもしろいタネ明かしもあるにはあるのですが、今回つくづく感じたのは、映画とは壮大な“だまし絵”であるということ。俳優たちはあくまでも演技しているのだと知っていても、この物語はフィクションなのだと理解していても、この風景はセットなのだと分かっていても、素晴らしい作家の手にかかれば、観客は作りものからでも本物の感情を抱くことができるのです。
『鍵泥棒のメソッド』は騙し合いを軸にした物語ですが、この作品を俯瞰で捉えてみれば、騙し合いのドラマと映画手法を使って、観客を楽しく操っている素敵なだまし絵ということに気づかされます。そもそも人は、手品やトリックアートが大好きですよね。見事に騙されると大喜びし、騙しの手法が緩いとガッカリ。