『舟を編む』黒木華インタビュー 人生の転機は天才・野田秀樹の「現場」から
まさにその言葉通り、こちらの質問に対しても一つ一つ、自分の中にある言葉を慎重に探しながら答えを紡いでいく。性格によるところも大きいのだろう。「そもそも人前で話をするのは苦手なんですが…(苦笑)」と、何とも申し訳なさそうに答える彼女がなぜ人前で演技することを生業に選んだのか?
「人と何かをするというのが好きなんですね、きっと。高校で演劇をやっていた頃は、ただ漠然と好きでやっていたんです。大学を決めるときにどうしようかと考える時間があったんですが、そこで家族が『自分の好きなことをやればいいよ』と言ってくれたんです。それでお芝居を勉強するための大学に入ったんですが、そのときもまだ女優になれるなんてことは思ってなくて…。やっぱり大きかったのは野田さんのワークショップに行って、プロの現場を初めて見たことですね。どうやっていくのか?というのを漠然とではなくリアルに感じることができたので」。
ごく近しい人間の目にも、役に入ったときの彼女は“豹変”しているように映るらしい。
「よく言われます(笑)。初めて野田さんと勘三郎さんと一緒に記者会見に出たときも緊張して何も話せなかったんですが(苦笑)、不思議と役を通して何かを伝えたいっていうときはできるんです。