【インタビュー】『海街diary』是枝裕和監督 4姉妹と築いた漫画と映画の幸せな関係
と表現する。
「何を考えて吉田さんはこういうシーンにしたのか?読み解いていきました。他人の作品をこんなに読んで、読んで、読んで…というのはなかなか。そこからスタートして、でも途中からは(綾瀬さんらキャスト)4人を選んだので、この4人をどう動かしていくか?という演出家の視点にシフトしていきました。例えばですが原作の1話目は、なぜ佳乃が恋人の部屋のベッドで目を覚ますところから始まるのか?家から始まってもいいはずなのになぜなのか?そんなことを考えていくところから始まりました」。
「不在者」と「残された者」、「死」と「記憶」――海外映画祭の常連でもある是枝監督の作品について語る上で頻出するキーワードと言えるが、この脚本執筆の思考の過程でまさに、こうしたテーマとぶつかった。
「原作者の吉田さんには『お任せします』と言われたんですが、唯一、『アライさんだけは出さないでください』と言われたんです」。
アライさんとは原作にも幾度となく出てくる人物で、看護師である幸の後輩なのだが、連載を通じてなぜか幸をはじめ他人の会話の中でその存在が語られるばかりで、本人の姿は一度も登場しない。
「それを深く考えていくと、この物語は、出てこない人間が重要な役割を果たす作品なんだと改めて思い直しました。