【インタビュー・前編】バズ・ラーマンが語る、「ゲットダウン」に込めたヒップホップへのリスペクト
もうひとりは、当時のヒップホップシーンの目撃者であると同時に、ヒップホップという音楽を批評的なフィールドで初めて論じた、ネルソン・ジョージである。フラッシュはアソシエートプロデューサーとして本作に関わり、ネルソンはスーパーバイジング・プロデューサーとして参加。同年代のふたりは、1977年という時代を生きた人物として、本作のリアリティーに大きく寄与している。
「ある日、バズが俺のところにやって来て、『僕はあなたのレコードの成功やスター性などには興味がありません。成功してからの時代ではなく、これが内在していた時代のことが知りたいのです』と言ったんだ。俺が『なぜだ?』と尋ねると、彼は『これまで誰も試みたことがないから、それを敢えてやってみたい』と」。今年で58歳とは思えないエネルギッシュな語りに圧倒されながら、フラッシュはバズとの制作当初のことを語り始める。全身を黒と白で統一したスタイル、靴はもちろん、シャオリン・ファンタスティックをはじめとする劇中の登場人物たちと同様、プーマだ。
そのときにずしんと足を踏みならしながら、巨大な体躯から発せられる彼の力強い言葉にただ耳を傾ける。「長い間、こういった作品が出来て欲しいと思っていた。