【インタビュー・前編】バズ・ラーマンが語る、「ゲットダウン」に込めたヒップホップへのリスペクト
この2人は、あの頃実際にそこにいたんだ。危険な時代だった。ストリートは荒れていた。暴力がはびこっていた。でも当時若者だった彼らは、ネガティブなものは一切感じていなかったと思うよ。フラッシュ、そうだろ?
フラッシュ:正直なところ、80年代の一部のジャーナリストたちが、この場所をいつも火事が起こっていた危険な場所として型にはめてしまったと思うよ。でも、俺たちにとってブロンクスは真っ白なパレットだった。音楽の部分ではね。
1970年代、当時のニューヨークは経済的な破綻を迎え、街の治安は悪化の一途を辿っていた。ブロンクスでは、無人となってしまったアパートの所有者が保険金目当てにギャングに放火させ、至るところから炎が立ち昇っていた。本作では、当時のニュースや記録映像の数多くが本編中に幾重にも差し込まれており、街の荒廃した様子がアリティーのある映像とともに示される。
劇中において、テクスチャーの異なる様々な映像をコラージュ的に展開させていく手法は、これまでのバズ・ラーマンの作品にも多く見られる表現方法であった。『ロミオ+ジュリエット』や『ムーラン・ルージュ』における、その独自の感性によって繰り広げられる大胆で華美な意匠、耽美なアレンジメントの数々に感じられる斬新なミクスチャー感覚は、サンプリング主体の音楽であるヒップホップとフィーリングとして通じるものがある。