くらし情報『『ミッドサマー』と『ヘレディタリー』の深い繋がり―「絶望の叫び」と「疎ましさ」からアリ・アスター作品を読み解く』

2020年3月3日 18:00

『ミッドサマー』と『ヘレディタリー』の深い繋がり―「絶望の叫び」と「疎ましさ」からアリ・アスター作品を読み解く

物語の鍵となる3つのポイント

その時間配分から、『ミッドサマー』についてはホルガ村の異様なしきたりや儀式について語られることが多いが(もちろん、それを語ることの重要性は否定しない)、ホルガ村に到着するまでの36分の間に、作品の鍵となるポイントはすべて提示されている。一つは妹の死。もう一つは──これは『ヘレディタリー』では描かれなかった──主人公を表面的には慰めながらも本心では疎ましく思っている恋人の存在だ。男友達と楽しい時間を過ごしているのにウザったい電話をかけてくるダニー、男友達と(現地での女遊びも見据えた)旅行の計画を立てているのに空気をまったく読めずについてくるダニー、みんなでマリファナを吸う時に一人だけ「私はちょっと……」とかノリの悪いことを言い出すダニー。自分は男なので、最初に『ミッドサマー』を観た時、思わず「あるある!」的に恋人のクリスチャンに同情をしてしまったが、よくよく考えたらクリスチャンは本当にロクでもないやつだ(恋人の誕生日は忘れるし、友達の論文のテーマを平気でパクるし、友達が突然姿を消してもほとんど気にもしないし)。しかし、そのロクでもなさはそのまま、この物語が始まる前に主人公ダニーが生前の妹にとってきた態度にも当てはまるのではないだろうか。

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