くらし情報『『ミッドサマー』と『ヘレディタリー』の深い繋がり―「絶望の叫び」と「疎ましさ」からアリ・アスター作品を読み解く』

2020年3月3日 18:00

『ミッドサマー』と『ヘレディタリー』の深い繋がり―「絶望の叫び」と「疎ましさ」からアリ・アスター作品を読み解く

とジャンル分けされることで観客が限定されることに懸念を示している)のジャンルにおいては異例の長さを持つ『ミッドサマー』にも、主人公の絶望の叫びはしっかりと刻印されているが、そのシーンは思いのほか早い段階、正確に言うと作品が始まってまだ12分しか経っていない時に訪れる。物語の序盤部分なので詳細を書いてしまうが、主人公ダニーの両親と故郷で一緒に暮らしている双極性障害(とはっきり病名が劇中で語られている)を患う妹が、両親を道連れにクルマの排気ガスを用いて無理心中を図る。絶望の叫びは、ニューヨークで大学に通っているダニーがその事件の全容を警察から電話で知らされた時に発せられる。スクリーンを注視していると、バスルームの鏡にダニーの背後で一瞬映る姿、さらに物語の舞台がスウェーデンに移ってからは薬物でのトリップ中の幻覚、最初の死を目撃した直後の幻視と、その後も妹は作品全編でダニーへの「呪い」として痕跡を残し続けていることに気づかされる。『ミッドサマー』はまず第一に、ダニーと死んだ妹の物語なのだ。

『ヘレディタリー』と『ミッドサマー』の共通点

『ミッドサマー』のダニーと死んだ妹との関係は、そのまま『ヘレディタリー』における兄と死んだ妹(前述した母親にとっての娘)

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