池井戸ドラマの元祖にして王道「半沢直樹」VS 正義と必要悪に葛藤する主人公を描く異色作「鉄の骨」
です。建設業界における「談合」――公共事業や新たな施設の建設の際に行われる入札の金額を参加企業が事前に話し合い、落札業者を調整するという不正行為をテーマに扱っていますが、大きな特徴は主人公が、この不正に手を染める側の人間であるということ。
神木隆之介演じる主人公・平太は中堅建設会社に勤める誠実な若手社員。そんな彼が、公共事業の受注などを担当する業務部への異動を命じられ、そこで建設業界全体で当然のごとく行われている談合の実態を目の当たりにし、自らもそこに関わっていくことになります。
通常の池井戸ドラマであれば、正義に燃える主人公は、そんな業界に怒りを覚え、不正を暴いて…という展開になりそうですが、そうはならないのが本作の魅力。違法であり、不正であることは間違いないが、その一方で談合は雇用、業界全体を守るための“必要悪”。そんな大人たちの論理を前に平太は葛藤し、見る者に「正義とは何か?」と問いかけます。
とはいえ、そんな重いテーマを描きつつも、熱い人間ドラマと爽快感、そして最後にはアッと驚くどんでん返しも待っており、「半沢直樹」同様にしっかりと「これぞ池井戸ドラマ!」と言える魅力が詰め込まれています。