くらし情報『辻仁成インタビュー 「アントニオ猪木さんをもう一度、リングに上げたかった」』

2009年10月24日 18:06

辻仁成インタビュー 「アントニオ猪木さんをもう一度、リングに上げたかった」

特に終盤、猪木さん扮する“大魔神”がたった一人でリングに上がる幻想的なシーンは印象深い。
「猪木さんは『(引退後は)二度とリングには上がらない』っておっしゃってたんです。映画監督として、この人をリングに上げたいなって(笑)。若い頃からファンでしたしね。あのシーンが表現してるもの?あまり言葉では言いたくないんですが…父親の抱えている責任感とか、後悔の念、そういったものがリングに表れているのかな」。

「9.11」を目撃して心の内に生じたある変化

「優しさを内包した作品にしたかった」という監督の言葉通り、スクリーンが映し出す人々の表情、アカシアの花、函館の街からは、切なさと共に確かな優しさが伝わってくる。辻さんはそこに、映画監督としての自身の変化も感じているという。
「9.11以前の自分の(監督)作品は、全て暴力なんですよ。
暴力で人が無残に死んでいく映画で、海外の映画祭でも客が半分帰っちゃう(苦笑)。でも9.11の惨状を見て『もう暴力はtoo muchだな』って思い、自分の作品を観ることすらなくなってしまったんです。特に海外にいて、テロが日常にあるような時代の中で、何かを繋げていく、ということが映画や音楽、小説の使命だな、と。

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