人生を1枚の写真に込める…『おもいで写眞』熊澤監督がオリジナル脚本で紡いだ意義
カメラマンの方が遺影写真を撮ろうとするけど、皆さん『縁起でもない』と言って積極的に撮ろうとしてくれないので苦労している、と。それがきっかけになって、どうやったら自分の親やお年寄りの皆さんが写真を撮ってくれるだろうと考え始めたというのが最初の着想でした」と語る。そこには、熊澤監督自身の母の存在も影響していたようだ。
その後に東日本大震災が起き、監督の着想はより具体的なものとなっていった。「大きな被害を受けた場所で泥や瓦礫に埋れてしまった写真を探し出して修復したり、持ち主の元に返すことをなさったりしているのを知って、写真というものが人間にとって非常に重い意味を持ち、大きな影響を与えるものだということを感じたんです」と明かし、本作で描かれる1人ひとりの生きた人生を1枚の写真に込めるというテーマへと繋がっていることを示す。
写真というのは過去を懐かしむものではなく、1枚のおもいで写真の存在が明日を前向きに生きて喜びを感じられるものとしてあるべき、という観点から本作は描かれており、劇中で自身の“おもいで写真”を見て、目を輝かせながら喜びを噛みしめる人々の姿はまさに熊澤監督が描きたかった写真という存在の意義。