【インタビュー】ヴァレリー・ルメルシエ、強い意志と決意で挑んだ大スター誕生の物語『ヴォイス・オブ・ラブ』
そうなんです、おっしゃるようにセリーヌは唯一無二の存在。だから、セリーヌ・ディオンと描かれたレコードジャケットが私の後ろに飾られていたら、嘘っぽくなると感じました。制作の早い段階で“アリーヌ”という名前に変えたことで、私自身は演出上の自由を勝ち得たんです。気負いなしに架空のエピソードを盛り込めたし、事実以上にロマンティックで映画的な作品にすることが出来ました。
セリーヌは私よりもずっと若いし、私よりも何百万倍も有名。私は彼女の香り、パルファムのようなものを薫らせることはしましたが、セリーヌに取って代わることは試みませんでした。それと同じ理由で声もセリーヌの声を使わず、別の女性歌手にすべてを任せたんです」
――ヴァレリーさんは、実際にセリーヌのファンだそうですね。
実はコンサートに行った後で、30秒ぐらいだったら会えるよと言われたんです。
でも、30秒なら私はきっと何も話せないし、消化不良になりそうだと思ったので、会うことは諦めました。彼女のことは多くの本で知っていましたから。ですから、会って挨拶するくらいの時間が、作品の何かを変えたとは思っていません。きっと一緒の写真をいっぱい撮られて、映画のプロモーションに使われて、二人は全然違うじゃないかと思われて終わるということになっていたかも知れませんし(笑)。