2022年12月12日 16:00
『あのこと』親友に妊娠を告げる、原作者アニー・エルノーの実体験映す本編シーン
刑務所に入りたい?」と制する。そして「好きにして。でも巻き込まないで」とアンヌを冷たく見放すも、やるせない表情を見せる、というシーン。
いくら親友であっても、中絶に手を貸せば自身も罪を問われることになってしまう時代。彼女たちもアンヌと同じように夢を持ち、大学に進学した自身の努力を簡単に無駄にするわけにはいかないのだ。望まぬ妊娠によって、友情すらも失い、孤独な状況下におかれるしかないという、女性ゆえに理不尽な待遇をうけるアンヌ。
本作の監督を務めたオードレイ・ディヴァンは、脚本を執筆する前に作者のエルノーと一緒に過ごし、エルノーから当時のこと詳しく聞いたという。ディヴァン監督は、「話をしながらエルノーは目に涙を浮かべていました」とふり返り、「80歳を超え今なお、いえていない彼女の痛みと激しい悲しみをどうにかして世に伝えたいと強く思いました」と語っている。
またエルノー本人は小説の中で「わたしの経験を過去の話として埋もれさせてしまってもよい理由があるとは思えない」と記しており、相当な覚悟を持って「事件」を執筆したことがうかがえる。
アニー・エルノー原作映画『シンプルな情熱』特別上映決定
さらに『あのこと』の公開を記念して、エルノー原作映画『シンプルな情熱』(21)