『ボックス!』李闘士男監督が明かす――市原隼人&高良健吾の“リアル”
リアリティを追求したボクシングシーンの中でも、クライマックスの県予選決勝、カブと宿敵・稲村の試合の決戦のラウンドは圧巻!「俳優たちが僕の想像を超えたシーン」と語る監督。撮影を前にある決断があった。
「1ラウンドを丸々、1カットで撮ったんです。リングに向かって『お前ら、止まるな。やれっ!』って(笑)。アマチュアルールなので、1ラウンド2分ですが相当きついですよ。僕が出した指示は『休まずに必ずどちらかが手を出せ』ということ。『カブが倒れようと、稲村が倒れようとおれが芝居を繋ぐから心配するな、本気でやれ』と。
試合が終わった後の2人の行動も、全く脚本にはなくて、あいつらが勝手にそうしたんです。半分ドキュメンタリーですよ」。
天才と呼ばれつつ、勝ち続けるのでなく、挫折を繰り返すカブ。これまでにないタイプの“天才”であるが、監督は、自身の内にある、映画制作に対する情熱と絡めてこう説明する。
「僕は、“人”が撮りたい。とにかく人に興味があるんです。その中でも、自分で自分のために頑張るヤツには何の共感もわかない。今回で言うと、カブはアホやけど、負けて、負けて、そこから他人のために本気を出す。
そこがかわいくて仕方なかった。