キングギドラ、モスラをつくった怪獣造形師・村瀬継蔵が胸にとどめる円谷英二の金言
次に皮膚をどう造ったらいいかな? と考えた時、周りのスタッフさんが休憩時間に落花生の殻をむいてピーナッツを食べていたんです。それを見て、この殻の表面がすごくおもしろいなぁと思って、試しに粘土で殻を模した原型を作って円谷さんに見せたら「いやぁ、これはおもしろいな。植物が動物の皮膚になるなんて、考えたこともなかったよ」と驚いていました。
あの経験が私の造形の仕事の始まりですね。円谷さんが「君は次から次へと新しいものを考えて生み出してくれる。それをこれからも映画の世界でやっていってほしい」と言ってくださったのを覚えています。
――日本映画界における“特撮の父”ともいわれる円谷英二さんは、どんな方でしたか?
村瀬:円谷さんという方は、自分で原型を造ったり、「こうやるんだ」といった技術的なことを言うことが一切ない人でした。できたものだけを見て「良い」か「悪い」としか言わないんです。
それだけじゃ僕たちは、そう簡単に造れないですよね(苦笑)。それを円谷さんに言ったら「いや、それで十分だろ」と言われました。
円谷さんが口を酸っぱくして言っていたのは「上に立つ人間が『これが良い』とか『こうやってやれ』と言ったら、君たちがやる仕事がなくなってしまう」