くらし情報『女の節目~人生の選択 (4) vol.4「初めての、遅刻」【6歳】』

2014年10月17日 11:00

女の節目~人生の選択 (4) vol.4「初めての、遅刻」【6歳】

母親はそそくさと私の手を離し、講堂の父兄席へ去って行った。

教室前の廊下には、クラスメイトたちがずらりと並んでいる。式典が始まる時刻に合わせて整列したのだ。私立小学校の新入生、女ばかり約40名の小さな子供が、同じ制服を着て、二列に並んで担任教師の指示を待ち、じっと立っていた。その光景は、絵本『ちいさなマドレーヌ』を思い起こさせた。パリの寄宿学校に通う女児たちのお話だ。修道女に引率されてお行儀よく散歩に出かけた先々で、破天荒な主人公だけが何か事件を発生させ、場全体がドタバタと乱される。みんなと同じ制服を着ているはずなのに一人だけ悪目立ちする、今の私はマドレーヌそのものだと思った。


二列に並んだ女の子たちは、それぞれ隣の子と手をつないでいた。一人だけ、誰とも手をつながずにいる小柄な子がいた。担任教師に促されて私が彼女と手をつないだ途端、行列は講堂へ向かって前進し、到着と同時に式典が始まった。別れ際に母親は息を弾ませて「ギリギリ間に合ったわね、よかった!」と言っていたが、ちっとも間に合っていないし、全然よくなかった。他ならぬ我々の遅刻が、入学式の開始そのものを遅らせていたのだ。

大人も子供も校長先生も、みんな私の登場をじりじり待っていた。

関連記事
新着くらしまとめ
もっと見る
記事配信社一覧
facebook
Facebook
Instagram
Instagram
X
X
YouTube
YouTube
上へ戻る
エキサイトのおすすめサービス

Copyright © 1997-2024 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.