ソロシネマ宅配便 第8回 “実写化マスター”佐藤健、映画『亜人』での思い切った割り切り
その“命を繰り返す”設定を最大限に生かして、原作ファンも『おもしろい』と言ってくれるものを作りたいと思ってました」と公式パンフレットでコメントしている。
すごい。さすが、実写化マスターこと佐藤健である。演技力だけでなく、この思い切った割り切りが、『るろうに剣心』や『バクマン。』の漫画実写化のヒットに導いたのではないだろうか。本作でも原作の良さは継承しつつ、心身ともにタフな映画オリジナルの永井圭を作り出すことに成功している。
○■佐藤健と綾野剛のアクションシーン
綾野剛が演ずるテロリスト佐藤にしても、原作より設定年齢がかなり若いが、滋賀県の旧住友セメント工場で撮影が行われた激しく緻密なSATとの戦いでは、その肉体の若さがフィジカルなアクションシーンに説得力をもたらした。
「そこまでしてなぜ人間の味方をする?」
映画の終盤、ふたりが対峙する決戦で、宿敵からそう問われた永井は、「人間とか亜人とかそんなことどうでもいいんですよ。
僕はただあんたが嫌いなんだよおっ!」と鬼の形相で咆哮して戦い続ける。リアリティのない設定のはずが、亜人と人間の境界線に存在する永井圭の表情には、確かにリアルな感情があった。