女の節目~人生の選択 (10) vol.10「初めての、バイト」【17歳】
私は自分が生きていけるだけのお金を自分で働いて手にしたいだけだった。大学へ通うとか趣味を楽しむとか、そんな自由を買い取りたいだけだ。もし病んだり老いたりしたら誰かのお世話になるだろうけど、それを雇うお金だって今から貯めておきたいと思っていた。でも一方で、せっかくなら向いていて楽しい仕事のほうがいい、と欲を出すようにもなった。
楽して稼ごうと思えば逆に、自分の時間やスキル、可能性を無駄にしていたと思う。それぞれのバイト先で、それぞれに魅力的な人と出会い、それぞれに面白いことが起きた。いつかこのことをどこかで書こう、と思いながら働いた。そのうち一つに編集アシスタントのバイトがある。
出版社の人に「今すぐにでもプロの編集者になれるよー」とおだてられたことが、現在に結びついている。
○仕事なければそれだけ命が縮む
一度に二つまでしか皿を運べず音を立てて客の前に投げ出すウェイトレス、飲み終えると同時にひったくるように空いたグラスを下げるバーテンダー、家畜の群れでも扱うような態度の入場整理係、棒立ちで闇雲に宣伝文句を怒鳴っているだけの売り子。こんなに一生懸命働いているのにどうしてこんなに生活が苦しいんだ、という顔をして、満員電車で他者を押しのけるときだけ瞳をギラギラ輝かせる社畜たち。