ソロシネマ宅配便 第16回 アーティスト・渋谷すばるを堪能できる映画『味園ユニバース』
作品から裏大阪の濃さと暴力とその土地での生活の匂いを感じられたからだ。主演の大森茂雄役には元関ジャニ∞の渋谷すばる。刑務所を出所した直後に襲撃され、記憶喪失になった茂雄の歌声に惚れ込み、“ポチ男”と名付け面倒を見るのは二階堂ふみ演じる佐藤カスミだ。
父親を交通事故で亡くし、サウンドスタジオSATOの経営を継ぎ、バンド“赤犬”のマネジャーを務めるカスミは、怪我をしたボーカルの代役をポチ男の才能に託す。だが、日々歌いながら徐々に記憶の断片が戻ってくる茂雄。味園ユニバースでの赤犬ワンマンライブも決まったが、どうやら以前の俺はとんでもないクズのようやった……。
○■アーティスト・渋谷すばるが前面に出た映画
これはアイドル・渋谷すばるではなく、アーティスト渋谷すばるが前面に出た映画だ。なぜなら茂雄の歌唱力に説得力がなければ、物語は成立しない。
冒頭の浪速公園における赤犬のライブでマイクを奪い、唐突に和田アキ子の『古い日記』を熱唱するが、その歌声は映画館の音響設備で聴くと強烈だった。公式パンフレットでも山下敦弘監督が「茂雄が最初に公園で歌うシーンは凄いけどね……。茂雄は、この声を持っているんだ……と思えたから」