ソロシネマ宅配便 第16回 アーティスト・渋谷すばるを堪能できる映画『味園ユニバース』
と絶賛。記憶もカネもすべてを失ったが、音楽だけが残ったロクデナシ。そんな明日なき男と渋谷すばるの歌声は違和感なく同化していた。
違和感がないと言えば、個人的に、本作に本人役で出演しているオシリペンペンズのボーカル・石井モタコ氏は大学の同級生である。特別仲が良かったわけではないが、1度だけ梅田ヒートビートでのザ・ハイロウズのライブへ一緒に行ったことがある。最後に偶然会ったのは天王寺の路上だった。
卒業後10数年ぶりにその姿を確認できたのが、この映画というわけだ。スクリーン上の飲み屋のカウンターでくつろぐモタコは、確かにカスミや茂雄と同じ世界にいた。
自分にとってそれは学生時代を過ごした大阪の日常の風景そのものだ。アホらしく腹立たしくも懐かしい過去。誰にでもそういう記憶はあると思う。笑って傷ついて、ときに裏切り過ちを犯し、大人になるための踏み台となった時間だ。
さて、茂雄やカスミは“自分の過去”といかにケリをつけるか?それはこれからの人生で、どこに自分の居場所を見つけるかということでもある。
つまり、この映画で大森茂雄は、己の“歌”から未来の自分の居場所を見つけていくのだ。まるで現在、ソロアーティストとして生きる渋谷すばるのように。
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