アラサー女性を少女漫画の洗脳から解き放て! - 『東京タラレバ娘』
とこき下ろしているのは象徴的だ。
さらに東村アキコ氏は、「このマンガがすごい! WEB」のインタビューの中で、本作についてこう語っている。
「『これを読んだおかげで現実が見えて、そこそこのとこで妥協して高校の同級生と結婚しました』って報告してもらえたらうれしいですよね」
つまり『東京タラレバ娘』は、決してアラサー独身女性に非があると責め立てるための漫画ではない。ただ、彼女たちを毒する「少女漫画脳」というロマンティック・ラブ至上主義の洗脳を、いささかスパルタなショック療法によって解こうとしているのではないだろうか。
男に甘い夢を見てしまう「愛」の幻想からアラサー女性を解放し、自立させるため、作者はあえて鬼になっているのだ。
そのやり口の是非はともかく、それが多くの女性読者に"響いてしまった"のは事実だ。彼女たちの「痛い!」「刺さる!」「死ぬ!」に込められた「!」のテンションは、依存症患者が禁断症状にもだえる叫びにも、あるいはカルト信者が洗脳を解かれて目覚めた歓喜のカタルシスのようにも、私には聞こえるのである。
<著者プロフィール<
福田フクスケ
編集者・フリーライター。