くらし情報『テレビ・ワンシーン考現学 (20) トイレで愚痴る部下は、個室に入っている女上司に気付かない』

2015年11月24日 17:00

テレビ・ワンシーン考現学 (20) トイレで愚痴る部下は、個室に入っている女上司に気付かない

「もう、清美、言い過ぎー」。息を潜める上司。誰のことだろうか、まさか私ってことないよね、と一旦は疑問程度に留めるのだが、「服装もなんか無理しすぎって感じだし」「こらこら清美」「あのカットソー、若作りにも限界あるっしょー」「いいすぎー」。自分のことだと察知した女上司は小刻みに震えながら彼女たちが出ていくのを待っている。コホンコホンとわざとらしく咳き込む場合もあるが、おおよそは洗面台の彼女たちは気付かぬまま、化粧直しをしてトイレを後にするのである。

刑事ドラマでは死体発見現場にスーツ姿の刑事がやって来て、死体やその周りを観察しながら、「ちょっとコレ、鑑識にまわしといて」と指示を出す場面があるが、実際にはあんな権限は彼らにはなく、せいぜい現場の様子を手短に確認する程度だという。しかし、あのシーンは「この犯人、絶対に逃がさないからな」という刑事の責任感を映し出すためには有効であり、現実的ではなくとも必要なシーンとして繰り返される。実は部下に嫌われている女上司を映し出すために女子トイレが活用されているのも同じ働きかけであるわけだが、死体現場にやってくる刑事の振る舞いを殆どの人が把握していないのとは異なり、女子トイレの中の出来事は女性の全員が把握しているわけで、だからこそ男たちは、ああやって提出される女子トイレの内実をそれなりに信じきっている。

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