2016年7月22日 10:00
「わかりやすい」作品が氾濫する世の中、日本に必要なのは"演劇"教育? - 演出家・平田オリザに現代エンタメのあり方を聞く
最初は患者さんがお菓子をばくばく食べて困るといった単純な芝居を創るのですが、ワークショップを進めるうちに、「おじいちゃんが糖尿病で、その娘がシングルマザーで、孫と3人で住んでいる。ある日、孫がおじいちゃんの誕生日にケーキを焼いてくれて、さあどうするか……」という芝居ができあがったんです。どちらにも善意があるから、問題解決が難しい。すごく、リアルな設定ですよね。
私たちを悩ませるのは、いつも、このような複雑な問題です。こんな風に、演劇を通すことによって、直面している問題の構造を考えることができるのではないかと思うんです。
○演劇による教育がなさすぎた日本
――とはいえ、様々な演劇を見ると、そういう問題設定ではないものもあるように思うのですが。
もちろんいろいろな演劇があって、単に楽しいものもあれば、考えさせるものもあっていいと思います。
ただ日本は、諸外国に比べると演劇による教育がなさすぎたので、今後はこういった考え方もありだと、思えるようになればいいのではないでしょうか。――確かに問題設定が一見ない、楽しいお芝居でも、役者の方は稽古の中で解釈を繰り返すので、考えることにつながっている気はします。