2017年6月11日 10:00
映画『無限の住人』8人の証言者たち - 「皆さまのもの」になるまで (18) セットを苦労して作り、自らの手で壊す心境とは? (7人目:美術 松宮敏之氏)
連載第18回は「美術冥利と宿命」。自らの手で"作品"を壊していく心境、そして喜びとは。
○自らの手で作品を壊す
――撮影が終わると、2カ月かけて作った宿場町も元の更地になるわけですよね。
そうですね。「元の状態に戻す」までが仕事ですので、跡形もなくきれいにします。
――苦労の末に作ったものを、自らの手で壊す。ちょっとさびしいですね。
映画の建込みは、普通の建築と違って「なくしてしまう」というのが宿命なので。
われわれにとってはいつものことというか(笑)。作っては潰して、作っては潰す。そんな世界です。
――たくさんのスタッフさんがコツコツ作り上げた世界観。試写をご覧になっていかがでしたか?
物語の中で、どんな感じでマッチしているのか。違和感なく、出しゃばらずになじんでいるのか。そこは確認できたので、とりあえずはよかったのかなと思います。
僕たち美術がちゃんとしたものを作らないことには、作品を正しく伝えられません。
演技や撮影方法などはもちろんのこと、僕たち美術もお客さんにその世界を印象づける役割を担っていると思います。○三池組は「現場がいちばん楽しい」
――「なくしてしまうことが宿命」