北野武監督の崖っぷちと『アウトレイジ』3部作の真実 - オフィス北野社長・森昌行P、同志の告白【短期連載 暴走の黒幕】
たけしさんにそのまま同じことが言えるとは思いませんが、映画を撮れる、続けられることが「監督・北野武」にとってはいちばん重要なことなんです。
混迷期の中で何を撮るべきかを探ってきた北野武自身がそこにたどりついたのではないか。これが私の推察です。そこで改めてたけしさんからアイデアがたくさん出たんですが、私としてはそこでこそ「バイオレンス・エンターテイメント」を提案したわけです。
――どのような狙いがあったんですか?
北野映画の出発点は『その男、凶暴につき』(89)。そして、代表作といわれるのは『ソナチネ』(93)や『HANA-BI』(98)で、ヤクザとか暴力のバイオレンス・アクションが少なからずある作品を通して北野武は1つのスタイルを確立していきました。ただ、十八番のバイオレンス・アクションを作って貰うといっても、『その男、凶暴につき』や『ソナチネ』に回帰することではありません。監督はありとあらゆるチャレンジをしてきました。
しかも、『座頭市』を除いてすべてオリジナルにこだわった作品です。『キッズ・リターン』(96)や『あの夏、いちばん静かな海』(91)のように、オリジナルの様々な作風を経て築き上げられるバイオレンス・エンターテイメントは、おそらくそれまでとは別のものになるんじゃないかと。