経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊 (18) ”サムライ”とは何か? 山口義正氏著『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』
一方で、密告社会化することを危惧する声もありますが、限りなく黒に近いグレーを発見した時に、グレーゾーンとして見てみないフリをするのか、膿を出し切ることで健全な成長、発展へとつなげていくために立ち上がるのかは、『サムライ』としての個人の正義感に委ねられるのだと思います。
私もジャーナリストとして『サムライ』でありたいと思っています」。
私自身、「サムライ」という言葉は、好きな言葉です。
本書を読み、いざという時には「サムライ」として振る舞いたい、そんな勇気の翼を与えてもらえた気がしています。
ただ、山口さんご自身のなかでは、もっと別の感覚をお持ちのようです。
「この本は、勧善懲悪の話ではありません。
『読者の皆さんも、すっきりとした読後感を感じていないのでは?』という気がしています。というのも、真実をできる限り追及しながら、あいまいな形で事件が幕引きとなってしまった…。
『オリンパス事件』は日本社会・日本人を象徴する事件だと言えますが、それを完全に打ち崩すことはできなかった。
その意味では、私は『敗者』かもしれません」。
勧善懲悪にはならなかった…その点では「敗者」。