経済キャスター・鈴木ともみが惚れた、”珠玉”の一冊 (18) ”サムライ”とは何か? 山口義正氏著『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』
を頭に入れ、そこを改めて意識しながら本書を読み進めていくと、「個人の力」を信じるようになり、心の中に「勇気の翼」が生えてきます。
と同時に、私たち一人ひとりの日本人が形成する「日本社会の弱さ」も浮かび上がってきます。
まずは同書のタイトル解説も記されている『あとがき』からご紹介しましょう。
「正義」を心の中心の近くに置く個人の情報提供によるスクープ記事に別の個人が共鳴し、さらなる個人の連鎖によって世界を揺るがす経済事件が明るみになる。
個人がつながりながら、重大な秘密を解き明かしていく様子は、まるで推理小説を読んでいるかのようです。
しかも、個人一人ひとりの個性が鮮明です。
まずは、その登場人物の一人である「深町」氏についてご紹介しましょう。
彼は「オリンパス事件」における最初の情報提供者であり、著者である山口さんの友人(カメラ仲間)です。
上記・プロローグに記されている深町氏による旅先での告白。
この告白を機に、「オリンパス事件」の全貌が明かされていくことになります。
深町氏からの情報提供はさらに続き、ついに、山口さんはオリンパスの取締役会資料を始めとする内部資料を手にし、巨額の損失処理について追及し始めます。