読む鉄道、観る鉄道 (11) 『大いなる旅路』 - 脚本・新藤兼人、主演・三國連太郎で描く機関士人生
映画監督、脚本家の新藤兼人氏が5月29日に亡くなった。
映画監督として数々の名作を残しているけれど、脚本にも注目作品が多い。
その新藤氏が関わった鉄道映画の名作が、1960年公開『大いなる旅路』だ。
監督は関川秀雄氏で、新藤氏は脚本を手がけた。
主演の三國連太郎は国鉄機関士の青年から壮年までの30年を演じきった。
実際に起きた鉄道事故が制作のきっかけで、全編を通じて鉄道機関士の真摯な生き方を描く作品であると評価され、当時の国鉄の協力を得た。
大正末期。
主人公の岩見浩造(三國連太郎)は蒸気機関車の助手(窯焚き)だ。
同期で親友の佐久間太吉(加藤嘉)は、東京鉄道教習所の試験に合格しエリートコースへ。
しかし浩造は不合格となり、ふてくされて仕事に身が入らない。
そんな浩造を諭す先輩機関士、橋下(河野秋武)と乗務した貨物列車が、雪崩を避けきれず脱線転覆する。
浩造は助かったが、橋下は「事故を知らせろ」と言い残して死ぬ。
現場に復帰した浩造は、新婚の妻(風見章子)と通り過ぎる列車を眺め、「列車を守る人がいるから乗る人が安心して眠っていられる。
俺達は一番大事なものを預けられていた」