読む鉄道、観る鉄道 (16) 『ハチ公物語』 - 変わりゆく渋谷で語り継がれる珠玉のエピソード
ところがある日、秀次郎は大学で急死してしまう。
静子は娘の嫁ぎ先へ移り、家は処分。
ハチは浅草の親戚の家に預けられる。
だが、ハチは渋谷まで脱走を繰り返し、やむをえず上野家に出入りしていた植木職人の菊さん(長門裕之)に引き取られた。
不自由のない暮らしをしていたハチ。
それでも飼い主だった秀次郎を思ってか、長年の習慣だった駅までの送り迎えを続けていた。
渋谷駅の国鉄職員や交番の警官、屋台の店主たちが、ハチの姿に感心し、温かく見守っていた。
その後、菊さんも急死してしまい、とうとうハチは野良犬になってしまう……。
子犬のハチの姿に癒され、たくましく生きる姿に感心しつつ、晩年に弱っていく様子にせつなくなる。
一方で人間たちのわがままぶりには疑問がつのる。
犬を飼っている人なら納得できない行動の数々。
ラストシーンを観て、「ハチ公は幸せだったのか?」と考えさせられる作品だ。
ペットを買う前に親子で観て、話し合ってもいいかもしれない。
同作品は大正時代から昭和初期にかけてのエピソードを、昭和末期に制作している。
だから渋谷駅を含めた建物や街の映像はすべてセット。
鉄道の風景も資料的な価値はあまりない。