読む鉄道、観る鉄道 (16) 『ハチ公物語』 - 変わりゆく渋谷で語り継がれる珠玉のエピソード
冒頭の雪景色で登場する蒸気機関車はC58形に見えるけれど、制作当時は雪のある地域を本線走行できる同型車はなかったと記憶している。
秩父鉄道のC58は本作と同じ1987年から走り始めているとはいえ、映画の製作期間には間に合わない。
映像では無蓋貨車も連結しているので、別の映画用に撮ったフィルムを流用したようだ。
興味深いところとして、生まれたばかりのハチが「チッキ便」で輸送されている。
「チッキ便」とは鉄道による小口荷物輸送制度。
駅で荷物を預けて、届いた荷物も駅に取りに行くというもので、現在は廃止されている。
現代風に言うと、コンビニで宅配便を預け、最寄りのコンビニで受け取るといったところか。
貨物列車は1つの貨車、または1個のコンテナ単位の契約になる。
「チッキ便」は旅行者のカバンや荷物を1個から預かる制度から始まっており、飛行機の預かり荷物のようなものだ。
積み込む車両は貨車ではなく、客車の一区画や荷物車だった。
これが後に、「駅で荷物用きっぷを買えば、荷物だけ送れる」ようになり、その荷札がチッキと呼ばれた。
本作でもチッキが登場し、「山手線渋谷駅行」「秋田犬一頭」