読む鉄道、観る鉄道 (17) 『駅 STATION』 - 北海道・留萠本線がにぎわった頃、高倉健が残したドラマ
現在の増毛町は約5,000人とのこと。
その意味でも、この作品は国鉄時代のローカル線の活気も見せる映画といえそうだ。
鉄道に対する人々の期待、ありがたみが、車内の混雑した情景に表れている。
留萠駅の構内放送「るもいるもい、るもーい」も軽やかだ。
増毛駅には駅員が常駐しており、台車にはチッキ便の荷物が山積みになっていた。
筆者は最近、留萌本線を訪れた。
留萌駅の構内放送は自動で控えめ。
増毛駅は無人駅であった。
タクシーの運転手に聞くと、炭鉱の閉鎖とニシンの不漁で人口が減り、かつてのにぎわいはないという。
『駅 STATION』の撮影が行われた当時の北海道の国鉄は、客車列車が淘汰され、気動車や電車に置き換わっていく時期だった。
劇中で約12年を描くため、序盤に旧型客車、中盤以降に気動車が登場する。札幌近郊の事件現場付近には711系電車が登場。
この電車の存在だけで、そこが札幌だと示している。
このように、鉄道を使って時系列や場所を示す手法は、高倉健主演、降旗康男監督の最新作『あなたへ』でも効果的に使われている。
さて、本作のタイトルとなった『駅』はどこだろう? 銭函駅は序盤だけだし、留萠駅は主人公たちにとって通り過ぎるだけの存在といえる。