“読書初め”におすすめ。『千年後の百人一首』で千年前の恋歌に思いを馳せる
例えば、
「なにはがた短き葦のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや」
この、「なにわがた~」と読まれた瞬間に、札を取りにいこうと必死になってしまう歌が、
かぼそく生えゆく葦の節と節の、このわずかな隙間ほどの時間も、あなたは私にくれないのだと、わかってしまう。わかってしまった。(19ページより引用)
と、切なさを感じさせる訳になっているのです。
単純に古文の授業のように直訳したのではなく、意訳であるために、「こういう気持ち、わかる」とか、「私も昔、こんなこと思っていたかも」と、日々の忙しさで忘れていた、さまざまな感情が湧いてくるので、さっと読み進めるのではなく、ひとつずつ、じっくりかみしめながら読みたくなります。
また、現代語訳を読んで思いを馳せるだけでなく、巻末の解説を読むのも面白いです。詠まれている単語がどういう意味なのかはもちろん、どういう状況で詠んだのかや、詠み手と歌を送られた相手、また他の詠み手との関係性、そのほかの豆知識も興味深いです。
「わびぬれば今はたおなじ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ」
この歌は、元良親王が、皇后・京極御息所との密通が噂されたときに詠んだ歌で、「すべてが知られ、糾弾されても、身を滅ぼしてもあなたに会いたい」