コード・レス・ドレス・コード 今日の自分を奮い立たせる古着たち
前の持ち主と出会って別れた洋服たちはどこかへ流れていこうとしている。
すれ違った瞬間に縁深さを感じて呼び止めるのは、旅先で少しだけ自分に似ている他人を見かけて離れがたくなる現象と似ている。
この人はどんな人生を歩んだのだろう。この服はどんな人生を包んできたのだろう。
前の持ち主がいた世界のことを考える。そして自分のいたい世界のことを。
特別な予定がある日――例えば、訳もなく元気がない日。ずっと迷っていたことに白黒つけると決心した日。
本当のことを言わなければならない日。そんな日のために、自分のクローゼットから古着を三着選んだ。
三着の前の持ち主の人生を勝手に想像し、その人生を包んでいたパワーを借りてみようと思う。
■元気がない日は「ぎらぎらのスカート」
前の持ち主の想像図
前も後ろも金色のスカート。なんというか、ぎらぎらである。
一方で妙にコンサバな形をしている。人間の大人のふりをしているんだけど全然擬態できていないドラゴンのようだ。
このスカートを履いていた女性を妄想する――。
80年代、同僚がこぞってパワーショルダーのジャケットを引っかけているのを尻目に、彼女はふにゃっとしたシャツを柔らかく着る。