コード・レス・ドレス・コード 今日の自分を奮い立たせる古着たち
転職サイトに登録する日。復讐心をあらわにしたメールの送信ボタンを押す日。引越しを決める日。別れを告げる日。大小さまざまな決断が積み重なり、歴史になる。
しゃりしゃりとした生地に手で描いたような有機的なドットが散っている。
「白黒つけながら、時々は揺らいでもいい」と言われているようである。
■告白する日は「お面のセーター」
前の持ち主の想像図
……いや、明らかに変でしょ。
フランスのヴィンテージショップの一角で私は困惑していた。
茶色いニットのセットアップ……なのだが、胸と膝にビーズでできたお面が縫いつけられている。
3つのうちふたつのお面が上下逆さまにひっくり返り、頭頂部からこれもまたビーズでできた長い紐が垂れ下がっている。何、この服!
店主のマダムがにやにや笑いながら「それ、日本のだよ」と話しかけてくる。タグにはカンサイヤマモトと書かれていた。
ここで売られているということは、前の持ち主はフランス人だろうか。あるいは、渡仏してきた日本人かもしれない。知っている人が誰もいない土地で、出身地を同じくするデザイナーの活躍に勇気づけられていたのかもしれない。
とぼけた顔のお面が3つ、力強くこちらを見ている。