大人の発達障害「ママ友とトラブルに…」つらくなる前に“無理してつき合わない勇気”
■「ほどよいおしゃべり」って、実はとっても難しい
――男の人と比べて、「女の人は雑談が得意」などとよく言われますが、おしゃべりがすぎて「つい余計なことを言って相手を不快にさせてしまう」とお悩みのママもいました。
村上さん:こういう方は、相手が会話の中で何を求めているのか、上手に察知できないのでしょう。例えば、食事中など第三者がいる場で、人が悩みや愚痴を打ち明ける時は、相手に共感を求めていることが多く、そういった場合に現実的なアドバイスや意見をするのはあまり歓迎されません。
でも、ASD(自閉症スペクトラム)の傾向が強い人は、相手が聞き入れる体制にあるかどうかをほとんど考えずに話してしまいがちですし、ADHD(注意欠陥・多動性障害)傾向が強い人の場合は、思いついたことをその場の状況を無視して口に出してしまうことが多いので、相手の感情を害してしまうことが多いです。
その場の雰囲気を感覚的につかむことが苦手な場合、まず相手は自分から意見を聞きたいのか、それとも愚痴って気分転換したいのかを観察してから発言するようにしましょう。
――具体的な方法としては?
村上さん:まず、相手がこの会話で何を重視しているのかを観察しましょう。例えば、ちょっと愚痴りたいだけなのか、何かアドバイスを求めているのかなど。
次に、相手の話を黙って聞いてみましょう。
今まで見えてこなかった相手の悩みや感情が出てくることがあります。そして、相手が伝えたいことは何か? に焦点を絞って話を聞きましょう。
最後に、相手がひと息ついたり、話に区切りをつけるような言葉(例えば「まあ、仕方ないんだけどね」など)が出てきてから、自分の意見を言うようにしましょう。そして、相手が知りたくない、聞きたくないことは極力言わないように心がけることが大切です。
――お話をうかがっていると、上手なおしゃべりって、かなり頭をフル回転させねばならない感じですね(汗)。
村上さん:言語聴覚士として、言語リハビリや療育支援の仕事をしていると、ご家族から「せめておしゃべりでもできるようになれば」と希望されることが多いのですが、でも、雑談するためには、実はとても高度な情報のやりとりをするスキルが必要なのです。
なかでも特に、非言語のコミュニケーション情報を操作するスキルがとても重要になります。会話は突然、主語や時系列、話題が変わるため、文脈から状況を推測する力が必要となり、発達障害の人にとっては難しいことが多いのです。
――たわいもないおしゃべりは、誰でも簡単にできると思われがちですが、必ずしもそうではないのですね…。
村上さん:最近では、発達障害は広く世間に知られるようになりましたが、言葉がひとり歩きして、「困った人たち」というレッテルばかりが増えている印象もあります。でも、実は一番困っているのは本人ですし、周囲の人も「本人が何に困っているのかよくわからないから困る」という発想の転換が必要なのだと思います。
発達障害の人たちが、このようなライフスキルを身につけるためには、幼少期からのトレーニングが必要で、大人になった今はもう手遅れではないか? と思われる方もいるかもしれません。
でも、村上さんのお話によると、「本人がその気になった時こそが、実は一番良いタイミング」とのこと。「大人だからこそ、言葉だけで解釈したり、達成度を数字などの尺度で確認できる強みもある」そうです。
実際、村上さんは当事者でもあり、発達障害を抱える旦那さまと一緒に試行錯誤を繰り返すなかで、言葉で確認し合える大人同士だからこそ話がわかる面も多かったといいます。何を始めるのにも、遅すぎることはないのかもしれません。
参考図書:
「ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本」(翔泳社)
大人になってから発達障害の症状に悩む人が増加しています。ここ10年で「発達障害」の知名度が飛躍的に上がったことで、「もしかして自分も…」と成人になってから気づく人が増えたのが最大の要因と思われます。発達障害の人には、「同時並行作業力が弱い」「段取りが取れない」
「ケアレスミスをする」「コミュニケーションが苦手」といった特徴があり、そうした症状に悩む人のために、上手に日常生活を過ごす方法を解説。
イラスト/高村あゆみ
取材/文:まちとこ出版社N
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