■子どもの寝かしつけはこの曲「シーン別・おすすめミュージック」
ⓒpolkadot-stock.adobe.com
私たちの生体リズムと、自然が織りなすリズムがリンクしているからこそ、心地よく感じられ、ひいてはリラックスにつながるというわけですね。
日々忙しく、自然がいっぱいの場所に出かける時間も取りづらいなら、癒しのエッセンスとして「1/f ゆらぎ」を取り入れた心地よい音楽の力を借りるのも良さそうです。
せっかくなので、ママパパが快眠したい時、赤ちゃんをスムーズに寝つかせたい時…といったシーンごとに、どんな音楽がふさわしいかを池田さんに教えていただきました。
シーン1:ぐっすり眠りたい時は…
私たちの体は副交感神経が優位になると、呼吸がゆっくりになり、リラックスしたり、眠くなるようにできています。そこで、副交感神経へのアプローチとして「呼吸と同調するようなテンポの曲がおすすめです」と池田さん。さらに、同じメロディの繰り返しが多い、歌詞がない曲だとなお良いそう。
「眠くなる方法として有名な羊数えのように、単調なことの繰り返しは、退屈でぼんやりして、眠気を誘います。そんな状況をあえてつくるように、シンプルなメロディを繰り返す曲がいいでしょう。
歌詞があると脳の中でも言葉の理解などに関わる部分の刺激につながるのでインストゥルメンタルが好ましいです。
例えば、スローなクラシック曲でも
『シューベルトの子守歌』『ブラームスの子守唄』など、タイトルに『子守歌(唄)』がつく曲は、上記に当てはまることが多いですよ」(池田さん)
もちろん、「1/f ゆらぎ」を感じられる自然の音も◎。梅雨時期なら、雨音をBGMに眠りにつくのも趣きがありますね。
シーン2:赤ちゃんを寝かしつけたい、気分を落ち着かせたい時は…
基本的にはシーン1と同じですが、おなかにいた時期が大人より近いこともあってか、胎内音(子宮血流音)に似た音で安心する傾向が強いそう。
「昔のテレビでは放映後に砂嵐のような画面になりましたよね。その時のザーという音は
ピンクノイズと呼ばれ、そういった音を聴くと、赤ちゃんが泣きやんだり、うとうとしたりするとの報告が多くあるんです。
また、
『ゆりかごのうた』など、子どものためにつくられた童謡やディズニー映画の挿入歌なども、わかりやすいメロディの繰り返しで構成されていますので、寝かしつけ時にマッチすると思います」(池田さん)
ちなみに、シーン1と2は、眠る前に体がリラックスモードに入りやすくなるよう、就寝の20分以上前から小さめのボリュームで流し始めるのがおすすめだそうです。
シーン3:イライラを沈めたい時は…
育児や仕事に追われていると、些細なことでイライラしてしまうことも。
そんな時にも「1/f ゆらぎ」のリズムは心を落ち着かせてくれます。とはいえ、これはあくまで生理学上での話。池田さんは「自分が好きで、心地良く感じる音楽なら基本なんでもOK」とおっしゃいます。
「副交感神経へのアプローチでいえば、眠りを誘う音楽のように単調である必要はありませんが、できれば呼吸を早めないゆったりした音楽が好ましいとはいえます。けれど、それにとらわれずロックでもJ-POPでも、
好きな音楽を楽しんでいただくことも効果的だと思います」(池田さん)
確かに、激しい音楽でストレスを発散できるケースもありそうです。好きな曲を思いっきり楽しむ時間そのものが、イライラ解消につながるのかもしれませんね。
シーン4:オフィスで集中したい時は…
仕事中に、周囲の雑音が気になることはありませんか? 実は、そんな場面でも自然音が応用できるそう。
「例えば、同僚のキーボードのカタカタ音などが耳につく時は、同じくらいの周波数の自然音を流すと気にならなくなります。
自然音で雑音を包み隠す=マスキングする、という考え方です。
キーボードのカタカタ音やエアコンの音なら、
さざなみ、せせらぎが同じくらいの周波数です。自然音は意識を傾けなくてもすっと耳に入ってきますので、仕事を邪魔せず、かつ雑音をマスキングしてくれます。
また、演奏法にもよりますが、話し声はサックスの音色と周波数が似ていたりします。
サックスが入ったジャズもいいですし、
ボサノバ、ワールドミュージックなども程よく耳に入りつつも意識が向きすぎない"ながら聴き”ができるので、作業用BGMにおすすめですよ」(池田さん)
静かな方が集中しやすいように思えるかもしれませんが、極度な静寂はかえって緊張感を高め、小さな物音でも気になってしまうことがあるそう。ながら聴きできる音楽は、カフェで流れているBGMをイメージするとわかりやすいですね。
音の好みや感じ方は十人十色ですから、誰にも等しく効果があらわれるわけではありません。それでも、日常のちょっとしたお悩みをやわらげる方法のひとつとして「自然音」の力を借りる方法もあることを知っていると、いざという時に活用できそうです。
今回、池田さんに教えていただいた音楽を参考にしながら、ご自身のお気に入りの音を探してみてくださいね。
▼池田邦人さん株式会社デラ 音楽プロデューサー。1979年、東京都出身。ギタリスト、作・編曲家、サウンド・クリエイターを経て、ミュージック・セラピーを推進する企業、株式会社デラに入社。医療機関などとも連携しながら、心と身体にやさしい音楽を模索している。
取材協力:株式会社デラ
参考CD:ほら、赤ちゃんが泣き止んだ!
季節のうつろいを感じながら、旬のおいしさを楽しめる「SiKiTO CAFE(シキト カフェ)」【編集部の「これ、気になる!」 Vol.122】