連載記事:わたしの糸をたぐりよせて

夫への不信感、そして昔好きだった彼とLINE交換で私は…【わたしの糸をたぐりよせて 第6話】

わたしの糸をたぐりよせて

わたしの糸をたぐりよせて

「いつか自分のブランドを出したい」。そんな想いを抱いていた学生時代。でも希望の就職先にはことごとくふられ、入社できた会社で出会った亮。結婚して、子どもが生まれて、私は幸せになれると思ったのに…。私の…

夫への不信感、そして昔好きだった彼とLINE交換で私は…【わたしの糸をたぐりよせて 第6話】
前回からのあらすじ
幼稚園のママ友からの執拗なダメ出しに疲れていく友里。さらに夫の亮のスマホには、意味深なメッセージが届く。
心にわだかまりが残る中、夫に頼まれた封筒を届けに行った先で、懐かしい顔と再会するのだった!
「ママ友の執拗なダメ出し、夫への不穏な通知…心のわだかまりが解けない」

●登場人物●
友里:都会で就職し結婚したが、夫・亮の転勤で地元の街に戻ってくる
:友里の夫。友里から告白してつきあうように。息子の悠斗を妊娠して以来、夜の生活がない
マキ:悠斗と同じ幼稚園に通うママ友で気が合う
カオル:悠斗と同じ幼稚園に通うママ友で、友里を配下に置こうと考えてる
イナガキ:友里の幼なじみ。小学校~高校まで一緒だった

※このお話はフィクションです


■心に暗い感情がのしかかる中、再会したのは…

夫のスマホに届いた不穏なメッセージ。そして急に決まった出張。
何もかもが怪しく思えてしまう夫の行動を、結局私は何ひとつ問いただせないまま、出張に出かける夫を見送った私。

そのホームで偶然再会したのは、幼なじみで小学校から高校まで一緒だったイナガキ君だった。
夫への不信感、そして昔好きだった彼とLINE交換で私は…【わたしの糸をたぐりよせて 第6話】
「イナガキ君、久しぶり! 元気だった?」

「うん、相変わらず元気でやってるよ! 今日はどうしたの?」

私は、夫の忘れ物を届けに行って、ついでに見送りまでしてきたことを話した。

「そっか、いい奥さんしてるんだね。
僕はまだ独身だからなー」

そう言って微笑むイナガキ君は、高校時代とまったく変わりのない笑顔だった。

「懐かしいなー。このままお茶でも誘いたいけど、あいにくアポイント入ってて。LINE交換しない?」

LINEを交換したイナガキ君は、颯爽とホームの階段を下りていった。

イナガキ君こと、イナガキアキラはいまもっとも注目を集めるイラストレーターだ。最近では、大ヒットゲームのキャラクターデザインを担当したり、お菓子のパッケージデザインを担当したりと活動は多岐にわたっている。

私とは、小学校と高校が一緒で、家も近所だったことからよく互いの家に遊びに行っていた。イナガキ君のお母さんがつくる餃子がとても美味しかったのを覚えている。


そして私は、あの頃ずっとそっとだけどイナガキ君を見つめ続けていたんだった…。それはもしかしたらイナガキ君も………?

(でも……イナガキ君の実家、もうないんだよね)



亮が出張から戻る日。悠斗と二人で餃子を作った。

「おにくこねこね、たのしいー!」

悠斗のその言葉に、ちょっぴり昔のことを思い出す。イナガキ君のお母さんの前で餃子のひだを作ったこと、うまくできなくて泣いちゃったこと、顔じゅうがオイスターソースだらけになっちゃったこと。
全部が愛おしく、懐かしい時間だ。

「ママー、これでいいの?」

悠斗が私のほうを見上げながら、慣れない手つきで餃子を包んでいく。ちょっと不格好な餃子だけど、焼いてみればたぶん世界でいちばん美味しいはず。
餃子は、出張から戻ってきた亮にも食べてもらった。悠斗が包んだことを話すと、とても喜んでくれた。
夫への不信感、そして昔好きだった彼とLINE交換で私は…【わたしの糸をたぐりよせて 第6話】
おなかも心も何となく満たされて、眠りに就こうとすると、またLINEが鳴った。カオルさんグループからだ。

『明日、久々にお茶会するよー。場所はまだ未定だけど、みんな集まってねー』

慌てる気配が漏れてくるほど、「わかりました」メッセージが一斉に届く。私も、何とか遅れないように通知することができて、少しだけ安堵する。


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