連載記事:わたしの糸をたぐりよせて
ママ友の逆鱗、夫の不穏な行動…心折れた私が頼ったのは【わたしの糸をたぐりよせて 第7話】
■「彼にすがりたい!」セルリアンブルーは背徳の色?
「セルリアンブルーだな、今日の空。季節が違うはずなのに、あのときの空の色に似てる気がするのは、友里ちゃんがいるからかな」
一足先にロビーを出たイナガキ君が、そうつぶやくので私も空を仰ぎ見る。青い空はどこまでも眩しく目がチカチカと痛くなった。
「お昼なんだけど、壁紙やナフキンなどに僕のテキスタイルを使ってくれてるレストランがあるからそこ行こう」
私たちはエントランスに横づけにされているタクシーに乗り込み、イナガキ君は運転手に行き先を告げた。
タクシーのなかは、少し寒さを感じるほどに冷房が効いていて、私は思わず「寒っ……」と身体を縮こませる。すると、
「はい、これ羽織りな」
ふわりとイナガキ君にジャケットを掛けられ、服についていたフローラル系の香りが鼻腔をくすぐった。
「イナガキ君、これいい匂い……」
「あ、気に入った? 先週出たばかりのフレグランスなんだけど、限定パッケージデザインを担当したんだ。ちょうど持ってきてたから後で戻ってきたときにあげるね」
「いいの? ありがとう」
タクシーは街道を進んでいく。
すると、遠目にカオルさんとよく似た人が見えて思わず私は顔を伏せた。
「なにしてんの? 別に僕たちはやましいことをしてるわけじゃない」
「そうなんだけどね……」
「う~ん、なんかあるっぽいな。着いたら話してよ」
イナガキ君の優しい言葉に、つい私は涙腺が緩みそうになる。
(ダメだあぁ! ここで泣くのはよくないって!)
それでも、最近降りかかってきたいろいろなことで心が折れかけている私は、つい彼の言葉にすがってしまいたくなっていた。
それが、どんな結果を招くのかも知らずに――。
イラスト・
ぺぷり