「さすがに彼氏さんにパンツ買ってきてとは言いづらいでしょ?」
あぁ、そうか、そうだよね。
確かに彼氏に着替えの準備をお願いするのは、気が引ける。
というか、もうそんな相手もいなくなってしまったんだ……。
そう思った瞬間、また気持ちが重くなる。
新実さんは私が入院したことを知っているはずなのに「大丈夫か?」のメッセージすら送ってこない。
「ええと。着替えと、洗面道具と、パソコンと、ポケットWiFiと……先輩、ここで仕事するつもりですか?」
「するでしょ。幸い怪我は利き手じゃないし、腕以外は元気なんだから」
「もう仕事の虫なんだから。
先生に怒られても知らないですよー」
だって、入院しろと言われたけど、仕事を休めとは言われなかったもの。
パソコンとネットがあれば、病室にいてもプロジェクトを進められる。そう思ったから入院を承諾したのだけど、旭日の忠告は正しかった。
「しおちゃん、今何時だと思ってんの?」
ブルーの手術着に白衣を羽織った大和が病室にやって来た。
「えっと、2時05分」
「消灯はとっくに過ぎてるよ。こんな夜中まで仕事したらダメだ」
「いいでしょ、別に。