個室だし、誰にも迷惑はかけてない」
「規則正しい生活をして、手術に備える。何のための入院だと思ってんだよ」
大和はそう言うと、私のパソコンを取り上げた。
怖い顔しちゃって……こんなに融通が利かないタイプだったっけ?
「分かった、もう仕事しない。でも、眠れないの」
「手術が怖い?」
「そうじゃないけど……色々、考えることがあって」
「しおちゃんって、昔っから変わってないよね」
ふふっと吹き出すように笑った大和は、パイプ椅子を出してベッドの隣に座る。
怒ったり笑ったり忙しい奴だな。
「しおちゃんが大学を受けた時のこと、覚えてる?」
「どうだったかな? 覚えてないよ」
「朝から晩まで勉強して、周りのみんなが『絶対受かるから大丈夫』って言っても、不安で眠れないって机にかじりついてた」
「あぁ~そうだったかも」
「昔からすごい努力家だったよね。でも、必ず無理が祟って体を壊すんだよ」
「そういや受験が終わってからしばらく寝込んだ気がする」
やだな、そんな昔のこと。どうして覚えているのよ。
「仕事が大事かもしれないけど、体はもっと大事だから。頑張るの禁止」
きっぱり言い放ったかと思えば、「今の、医者ぽかったよね?」