ずいぶんと大人な空間だ。
「ねぇ、私、何も覚えてないんだけど」
「心配しなくても、何もないよ。酔っぱらったしおちゃんを連れて帰って、一緒に寝ただけ」
「酔っぱらったって、私、お酒飲んでないよ」
「うん、稀にノンアルで酔う人もいるからね。錯覚だけど」
まさかぁ、と笑いながらかろうじて残っている記憶を辿る。
頭の中に浮かんだのは、大和の背中に乗っている自分だった。
「大和がここまで運んでくれたの?」
「そうだよ」
「ごめん、重かったよね?」
「そっか、知らないか。俺、大学までロッククライミングをしてたんだ」
「ロッククライミングって、あの、大きな岩とかを登るやつ?」
「うん、そう。人並み以上に鍛えてるから、しおちゃんの体重なんて楽勝」
言われてみれば、背中の筋肉がすごかったかも。
腕もパッと見た感じは細いから分かりづらいけど、血管が浮き出ていて男らしい。
顔はどちらかというと中性的で可愛らしいのに……これぞ、ギャップ萌えってやつ?
「(いやいや、おかしいよ)」
どうして大和相手にドキッとするの。
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負けるな、私
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「おはよう、旭日」