くらし情報『【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第4話)』

【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第4話)

いつかこの人の顔を見ても、何も感じない自分になれるのかな。

失恋の傷は、自分で思っていたよりも深い。

「旭日、朝イチで会議をするぞ。資料は揃ってるか?」

「すみません、サンプルがまだ……」

新実さんが放つ威圧感に、旭日は身を縮こまらせる。

見ていられず、助け舟を出した。

「サンプルなら備品室にあるよ」

「本当ですか? 行ってきます!」

備品室へ行くには、エレベーターより階段の方が早い。

そちらの方へ向かい走って行く旭日を目で追いながら、「しまった」と思う。

気まずさで、消えてしまいたくなる。


到着したエレベーターに乗り込んだ後も、新実さんがいる右側が見れない。

そうしているうちに上昇するエレベーターから1人、また1人と降り、新実さんと2人きりになった。

「引っ越ししたのか?」

ポツリ呟くように、新実さんが聞いてきた。

「もう関係ないですよね」

「汐里」

久しぶりに聞いたその呼び方に、泣きそうになる。

恋人でいられないなら、心の中に入ってこないでよ。

「そんな風に呼んだら、婚約者が誤解しますよ」

「……」

「プロジェクトから私を外したのは、常務の指示だったんですね。

関連記事
新着くらしまとめ
もっと見る
記事配信社一覧
facebook
Facebook
Instagram
Instagram
X
X
YouTube
YouTube
漫画家・脚本家募集LPバナー 上へ戻る
エキサイトのおすすめサービス

Copyright © 1997-2024 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.