くらし情報『【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第4話)』

【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第4話)

月曜日の朝。

会社のエントランスでエレベーターを待つ旭日に声をかけた。

「おはようございます!先輩、今日元気そうですね」

「そう?」

「なんか良いことあったんですか?」

良いことは……無いかな。

だけど、久しぶりにゆっくり寝て食べて、泣いて愚痴ってスッキリした。

おかげで吹っ切れた。

「引っ越ししたの、会社からはちょっと遠くなったけど良い物件があって」
「へぇ!今度遊びに行っても良いですか?」

「片付いたらね」

新しい家は、完成したばかりの賃貸マンション。

偶然にも大和が住んでるマンションから徒歩5分くらいの距離で、近くに知り合いがいるという安心感もあり即決した。

「片付けなら私が手伝いますよ~」

「旭日はそれより、プロジェクトに集中して」

「あぁ……考えないようにしてたのに、胃が痛くなってきました」

例のプロジェクトは、私の同期が引き継ぐことになった。
旭日はその補佐。

頑張ってね、と肩を叩こうとした瞬間、彼女は誰かに会釈をした。

「おはようございます、新実課長」

「おはよう」

吹っ切れたはずの胸が、鈍く痛む。

「おはようございます」

「あぁ」

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