くらし情報『【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第6話)』

【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第6話)

「肉、焼こう。肉」

「野菜も食べなさいよ」

「やめて、俺、ピーマン食えない」

「まだ克服してないの? 体に良いんだから食べなさい」

こんがりいい色に焼けたピーマンを、大和の口に入れる。

その途端、涙目になった彼を見て思わず吹き出した。

「美味しい?」

「意地悪だなぁ、しおちゃんは」

「ほら、お肉食べて!」

「うん、しおちゃんも。食べて食べて」

――不思議。

どんな高級レストランの料理よりも、今日のお肉の方が美味しい。

「大和、今日はありがとうね」

「うん?」

「すごく楽しかったし、美味しかった」

「しおちゃんのそういう素直なところ、好きだなぁ」

食事が終わり、腹ごなしを兼ねて庭園を散歩することにした。

そよそよと吹く風が気持ちいい。


「大和はさ……どうして私なの? もっと周りに若くて可愛い子がいるでしょ」

「しおちゃんより可愛い子はいないよ」

「いや、いるでしょ。看護師さんとか」

「俺にとってしおちゃんは特別だから。再会して確信した。しおちゃん以上に好きになる人はいない」

気が付くと、手を握られていた。

「今はまだそういう対象じゃないことは知ってる。

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