「肉、焼こう。肉」
「野菜も食べなさいよ」
「やめて、俺、ピーマン食えない」
「まだ克服してないの? 体に良いんだから食べなさい」
こんがりいい色に焼けたピーマンを、大和の口に入れる。
その途端、涙目になった彼を見て思わず吹き出した。
「美味しい?」
「意地悪だなぁ、しおちゃんは」
「ほら、お肉食べて!」
「うん、しおちゃんも。食べて食べて」
――不思議。
どんな高級レストランの料理よりも、今日のお肉の方が美味しい。
「大和、今日はありがとうね」
「うん?」
「すごく楽しかったし、美味しかった」
「しおちゃんのそういう素直なところ、好きだなぁ」
食事が終わり、腹ごなしを兼ねて庭園を散歩することにした。
そよそよと吹く風が気持ちいい。
「大和はさ……どうして私なの? もっと周りに若くて可愛い子がいるでしょ」
「しおちゃんより可愛い子はいないよ」
「いや、いるでしょ。看護師さんとか」
「俺にとってしおちゃんは特別だから。再会して確信した。しおちゃん以上に好きになる人はいない」
気が付くと、手を握られていた。
「今はまだそういう対象じゃないことは知ってる。