くらし情報『【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。』

【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。

それとなく雪村さんの方に視線を向けると、彼女は泣きそうな顔をしながらデスクの片付けをしていた。その顔に嘘はないように見える。そうだよね、考え過ぎだよね……。

「片付けはちょっと待て。現状を写真に撮っておけ」

いつの間にか出社していた新実さんが雪村さんの腕を掴み、彼女に指示を出した。

「私がですか?」

「それくらいできるだろ」

新実さんはそう言うと、渋い顔をしてどこかへ行った。



会いたい

会いたい


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【ごめん、今日の約束、無理になっちゃった】

【何かあった?】

【会社でちょっと……。残業になると思う】

【分かった。
仕事が終わったら連絡して】

了解、と。大和へのメールを打ち終えた私は、再び仕事に取りかかった。今朝の部署荒らし事件で紛失した書類の作成や破損データの復元作業など、やることは山積みだ。お陰で余計なことを考えなくて済むけど、体力的にキツイ。

――ピコン、

大和からスタンプが届いた。シュールな顔をしたゴリラがバナナを持って「がんばれ」と応援してくれている。いかにも大和らしくて、心が和んだ。

「……会いたいなぁ」

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