それとなく雪村さんの方に視線を向けると、彼女は泣きそうな顔をしながらデスクの片付けをしていた。その顔に嘘はないように見える。そうだよね、考え過ぎだよね……。
「片付けはちょっと待て。現状を写真に撮っておけ」
いつの間にか出社していた新実さんが雪村さんの腕を掴み、彼女に指示を出した。
「私がですか?」
「それくらいできるだろ」
新実さんはそう言うと、渋い顔をしてどこかへ行った。
◆
会いたい
https://www.shutterstock.com/
【ごめん、今日の約束、無理になっちゃった】
【何かあった?】
【会社でちょっと……。残業になると思う】
【分かった。
仕事が終わったら連絡して】
了解、と。大和へのメールを打ち終えた私は、再び仕事に取りかかった。今朝の部署荒らし事件で紛失した書類の作成や破損データの復元作業など、やることは山積みだ。お陰で余計なことを考えなくて済むけど、体力的にキツイ。
――ピコン、
大和からスタンプが届いた。シュールな顔をしたゴリラがバナナを持って「がんばれ」と応援してくれている。いかにも大和らしくて、心が和んだ。
「……会いたいなぁ」